大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)767号 判決

本件建物がもと被控訴人の所有であつたこと、被控訴人は青木輸出の代表取締役であり、同社は輸出繊維品の捺染工業を営み、控訴人は森友産業の代表取締役であり、同社は貿易を営み、青木輸出に対し捺染加工繊維品の製作を注文していたこと、本件建物について被控訴人の森友産業に対する借受金債務金百三十万円について昭和二十六年十月二十日森友産業のため抵当権が設定されたとの登記がなされ、さらに、森友産業の申立によつて横浜地方裁判所は右建物に対して任意競売手続を開始し控訴人に競落許可決定をなし、同人のため横浜地方法務局鎌倉出張所昭和三十年十一月三十日受付第四、二三九号で競落による所有権取得登記手続がなされたことは、いずれも当事者間に争がない。

証拠によると、次の諸事実を認めることができる。すなわち、昭和二十六年五月頃から森友産業は青木輸出との間に前記認定のような取引があり、この取引では森友産業は発注にあたり原反或はその購入のための前渡金を渡し、製品納入のとき精算していた。同年十月頃になつて青木輸出の経営が悪くなり、同月二十日森友産業は百五十八万円余の貸になつていたので、森友産業の代表取締役である控訴人は青木輸出の代表取締役である被控訴人と交渉の結果、被控訴人は個人として森友産業のため同年十一月中旬頃青木輸出が森友産業に対し現在及び将来取引によつて負担する債務について金百三十万円を限度として重畳的に債務を引受けることを約し、被控訴人の右債務を担保するため同人所有の本件建物に対し抵当権を設定し、日付を交渉の開始した頃の同年十月二十日に遡らせて、金百三十万円を利息年一割二分、弁済期昭和二十七年三月三十一日の約で借用するとの単純な借入金証書(乙第二号証)と借用金百三十万円のために抵当権を設定するとの担保差入証(乙第四号証)を作成し、これを森友産業に差入れ森友産業もその以前に交付をうけていた本件建物の権利証について一応被控訴人に預り証(甲第五号証)を交付した、その後も両社の間の取引は続いたが、青木輸出の経営は益々苦しくなり、同年十二月初め頃不渡手形を出すに至つたので、森友産業は被控訴人から同月七日登記手続に必要な委任状(乙第十一号証の二)、印鑑証明書(同号証の三)等の交付を受けて、前記認定のように登記手続を経由した。昭和二十七年二月二十八日前記取引による森友産業の青木輸出に対する債権は二百四万八千六百七十二円七十七銭となり、この中には昭和二十六年十一月中旬当時の債権金三百万円余のうち少くとも金百万八千六百七十二円七十七銭が残存し、その後は取引がなくなつたので、森友産業は同年五月初め横浜地方裁判所に対し、右のうち被控訴人が重畳的に債務引受をなした金百三十万円について、右と同額の貸金債権ありとして、本件建物に対する競売手続を申請し、同月八日及び同年七月十二日に前記認定のようにそれぞれ競売手続開始決定、控訴人に対する競落許可決定がなされ、控訴人が競落代金を完納したので、前記認定のように昭和三十年十一月三十日所有権移転登記手続がなされた。(中略)

森友産業が右認定のように被控訴人所有の本件建物に対し競売を申し立てた抵当権については、根抵当権なのに通常の抵当権とされている外、それによつて担保されている債権についても、消費貸借による債務でないのにそれであるとされている等のくいちがいがある。しかし、被控訴人が本件建物について抵当権を設定した債務は上記認定のように、被控訴人が昭和二十六年十一月中旬森友産業に対し重畳的に引受けた青木輸出の取引代金債務の内金百三十万円であるが、右契約締結当時すでに金百三十万円以上負担していて、しかも競売申立当時にその債務は金百万八千六百七十二円七十七銭残存していたのであることも、上記認定のとおりであるまた、右債務のみの関係からみれば既存の債務についての抵当権であつて根抵当権の関係にあるものではない。しかも、本件においては外の抵当権者等の第三者が存することについては、被控訴人からなんの主張も立証もないから、森友産業と被控訴人との関係のみをみれば、右のような抵当権と債権とについて存する多少のくいちがいは、右認定の抵当権の登記手続が有効であるか無効であるかの点についての判断をするまでもなく、上記認定の競売手続を無効とするものではないと解するを相当とする。よつて、控訴人は上記認定の競落によつて有効に本件建物の所有権を取得したものであるといわなければならない。

(村松 伊藤 土肥原)

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